PER(株価収益率)って一体何者?【金利 & 成長率との関係性】

2023年5月22日

以前の記事で、株価は EPS と PER の掛け算の形に分解できる事を書きました。

株価 = EPS × PER
EPS とは…当期純利益を発行済み株式数で割った、1株あたりの当期純利益。
PER とは…投資家がその株式に対して持っている期待の大きさ

株価を EPS x PER の形に表した場合、EPS は株式の本質的な価値、PER はその"価値"にどれだけの"倍率"を掛けて値付けがされているのか、という事を意味しています。

PER をチェックする事で、株式の EPS に対して割高なのか、逆に割安なのかを推し量ることができるようになりますが、今回はそんな不可思議な PER について調べたので深ぼりしてみようと思います。

PER (株価収益率) と株式益回り

冒頭でも述べたように、PER というのは株式の価値(EPS) にどれだけの値札をつけるのかを決めている、とても重要な指標となります。

しかし、EPS はカッチリした定義があるのに対して、PER の説明は何となく"ふわっと"した感じがしないでしょうか?

「期待の大きさ」って言われても…という感じですよね😅

PERを覚えたての筆者

PER ってなんなん?株式って会社の所有権そのものなのに、そんなふわふわした感じに値付けがされてんの?マジ?

そんな感じで PER の意味についてモヤモヤしていたのですが、ファイナンス関係の本を読んでいる内に、PER にはどうやら理論上の定義があるらしい…という事を知りました。(以下その説明)

まず PER は、日本語では「株価収益率」という名称が付けられています。

これはその名が示す通り、企業の収益 (=EPS) に対してどれだけの株価が付けられているのか、という指標となります。

株価収益率(PER) は言い方を変えれば、株価と同じだけの EPS を企業が稼ぐのに何年かかるのか?という事を表した数字でもあります。

株価収益率の考え方の例

株価 = 1,500円、EPS = 100円 の銘柄があり今後もこの値が変わらない場合、投資されたお金 (=株価) と同じだけの収益 (=EPS) を上げるには 15年かかる計算になる。

この場合、株価収益率(PER) = 15 となる。

そして今度はこの株価収益率の逆数を取ると、投資されたお金(=株価) に対して1年間にどれだけの収益(=EPS) を上げるのかという指標になり、これには「株式益回り(かぶしき えきまわり)」という名称が付けられています。

この「株式益回り」とは、すなわち EPS の年間の利回りを意味しています。

株式益回りの考え方の例

株価 = 1,500円、EPS = 100円 の銘柄があり今後もこの値が変わらない場合、投資されたお金 (=株価) に対して 1年間に収益 100円 (=EPS) を生むので、株式益回り = 100/1,500 = 6.7% となる。

株価収益率との関係で見ると、株式益回り = 1 / 株価収益率 = 1 / 15 = 6.7% 

株式益回りはどのように決まる?

さて、ここまでで EPS の年間の利回りを意味する「株式益回り」という概念が出てきました。

株式益回りを知った筆者

ふむふむ、PER の逆数が「株式益回り」で、年間でどれだけの EPS を会社が稼げるか(利回り)を意味してるのね…この株式益回りってどうやって決まるんだ?

この「株式益回り」はどうやって決まっているのでしょうか。

理論的には、以下の3点で株式益回りが決まると考えられています。

①リスクフリー金利
②投資家が株式に対して求める利回り(リスクプレミアム)
③利益(EPS)の成長率

①リスクフリー金利とは、米国や日本といった経済的に安定していて財政破綻の心配が低い先進国の国債利回りの事を指しています。

国債は、債務を負っている組織(政府)が財政破綻しない限りは必ず利息が支払われるため、投資すれば確実に利益が出る投資先として考えられています。

したがって、リスクの無い(=リスクフリー)金利という事ですね。

しかし、投資家というのは強欲な存在なので、往々にして国債の低い利回りでは満足できない体になってしまっており、より高い利回りの代わりにより高いリスクを負うようになります😵

それが、②のリスクプレミアムという名前のリスクの高い利回りになります。

これで投資家が株式に求める利回りとは①リスクフリー金利と②リスクプレミアムの合計という事が分かりましたね。

一方で、順調に業績を伸ばしている会社というのは今後も利益も着々と伸ばしていく事が期待されています。

利益が毎年成長していくと仮定するならば、投資家が負っているリスクは軽減される事になるため、最終的に投資家が株式に期待している利回りというのは①リスクフリー金利と②リスクプレミアムの合計から③利益成長率を差し引いた値、という事になります。

式で整理すると以下のようになります。

株式益回りの計算式

株式益回り = リスクフリー金利 + リスクプレミアム – 利益成長率

(計算の例) 国債の利回りが 2% の世界において、投資家はその銘柄に投資する事で国債よりも6%は上乗せで金利が欲しいと考えているとする。そしてその銘柄の年間の利益成長率が3%と期待されているのだとしたら、その銘柄の株式益回りは 2% + 6% – 3% = 5% という計算となる。

PER(株価収益率) の正体

本記事の途中で説明した通り、PER(株価収益率)と株式益回りは逆数の関係性となっていました。

したがって、PER(株価収益率) は以下のように定義する事ができます。

PER(株価収益率) の計算式

PER(株価収益率) = 1 / (リスクフリー金利 + リスクプレミアム – 利益成長率)

冒頭の 「PER は投資家の期待の大きさ」という説明よりは、もう少し詳細な形になりましたね。

この式の形で見てみると、「投資家の期待の大きさ」とは、つまるところ分母の"リスクプレミアム" と “利益成長率" の掛け合わせの形で表現されている事が分かります。

投資家が大きな期待を寄せる銘柄というのは、それだけ将来の利益成長率が上がることを期待されている銘柄です(利益成長率⬆️)

しかし将来は不確実なので、利益成長率の大きさに応じて投資家が負うリスクプレミアムも同時に上がっていきます(リスクプレミアム⬆️)

この2つの要素のバランスにより、PER の分母の大きさが変わり最終的に PER の値が変わる、という事ですね。

PERがちょっと分かった筆者

「投資家の期待の大きさ(PER)」っていうのはつまり、投資家が期待する"利益成長率"と その代償としての “リスクプレミアム" のバランスによって成り立っているんだね!

金利とPERの関係、成長率とPERの関係

上記の計算式を意識すると、国債の金利と PER の傾向に関係がある事が見えてきます。

  • 国債の金利が上がる⬆️ ⇒ PER 計算式の分母が大きくなる ⇒ PER が下がる⬇️
  • 国債の金利が下がる⬇️ ⇒ PER 計算式の分母が小さくなる ⇒ PER が上がる⬆️

現在のコロナ禍のように、不景気になると日銀は世の中の銀行が持っている国債を大量に買い入れることで、世の中にお金をどんどん供給して景気を持ち直させようとします。(大規模金融緩和)

一方、国債のような債券という資産クラスは日銀のように大量に買う存在が出てくると利回りがひたすら下がっていくため、相対的に株式の PER が上がっていってしまい、結果として企業の業績(EPS)に対して株価が高い = 不景気の株高 という現象が起こりやすくなるのですね。

また実際の個々の企業に目を向けてみると、業績の著しい成長が期待されている銘柄(グロース株)は PER が高く、業績の成長が緩やかな銘柄(大型株)は PER が平均的~もしくは平均以下という傾向にある事も分かります。

ここからも、上記の計算式に沿って利益成長率と PER の傾向に関係がある事が見えてきます。

  • 利益成長率が上がる⬆️ ⇒ PER 計算式の分母が小さくなる ⇒ PER が上がる⬆️
  • 利益成長率が下がる⬇️ ⇒ PER 計算式の分母が大きくなる ⇒ PER が下がる⬇️

おわり

以上、今回は自分でも疑問に思っていた PER について深ぼりしてみました。

素人なりの理解ではありますが、PER の理屈が多少でも分かると、投資しようと考えている銘柄が割安なのか割高なのか、ある程度の自信を持った上で判断できるようになるので、今回勉強してみてよかったです(小学生並みの感想🧒)

本記事が同じく PER に悩める方のお役に立っていましたら幸いです。(そんな人いる?)

それでは、また~👋

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