リスクとリターンのバランスを考える【リスクの数値化】

今回は、長期投資で資産運用を考える際に大切な、リスクとリターンのバランスについて書いてみたいと思います。

株式のように頻繁に値動きするリスク資産へ投資する際には、資産運用におけるリスクとリターンのバランスを個人にあうように調整していく必要があると考えますので、その際の参考になれば幸いです。

株式のリスクとリターン

株式投資で利益を出すためには主にキャピタルゲインとインカムゲインがありますが、株式の価格の上下差を利用した利益(キャピタルゲイン)を得るためには、当然の事ながら株式の価格が上下に振れていないといけません。

一般に投資の世界では、「リターンに振れ幅がある事(= 利益が出るときもあれば損失が出ることもある)」「リスク」と表現しています。(日本証券業協会HP

したがってキャピタルゲインでリターン(利益)を得るという観点においては、株式の価格が上下に振れている事そのものを「リスク」と解釈する事ができます。

ということは、価格の上下の振れ幅が大きいほど「リスクが大きい」という事になるため、リスク(価格の変動幅)が大きい投資先ほど「大きなリターンを得られる可能性が高い」というのが基本的な概念となります。(反対に、「リスクが小さい」投資先ほど、「小さなリターンとなる可能性が高い」となる)

まさしく「ハイリスク・ハイリターン」と「ローリスク・ローリターン」の原則が当てはまるというわけですね。

リスクの数値化

「価格が上下に振れている事 = リスク」と捉えるならば、そのリスクは数値で表現することができます。

ここからは統計学の分野になりますが、不確実な数値のばらつきがどの程度の確率に収まるのかを過去の統計から推定する際には、標準偏差という考え方を用います。

標準偏差とは、平均値からのばらつき(偏差)が「どの程度の範囲でばらついているのか」を数学的に分析して表した値です。

より具体的に言えば、例えばある統計データにおいて平均値A に対する標準偏差σ という値が出たのであれば、平均値A ± σ で表現できる範囲が、その統計データの代表的なばらつき具合を表している…といった考えとなります。

そして、統計データの生値から"それぞれの値の発生しやすさ"という数字に直してグラフに起こすと、以下のような釣り鐘形をした曲線で表すことができます。

上図のような、平均値を中心として左右対称の釣り鐘型の曲線で表現された統計データは、正規分布に従っていると表現されます。

正規分布に従っている統計データは、以下の特徴を持っています。
①平均値A が最も発生する確率が高い(=グラフの1番頂部に来る)
②平均値A を中心として、標準偏差±σ の範囲内に収まる確率は約68%
③平均値A を中心として、標準偏差±2σ の範囲内に収まる確率は約95%
④平均値A を中心として、標準偏差±3σ の範囲内に収まる確率は約99%

さて、長々と統計に関する素人の生かじりの知識を書きましたが(汗)、大事なのはここからです。

以上の正規分布の考え方は、投資のリスクとリターンの関係にも当てはめる事が可能です

まず、リスクとは「リターンに振れ幅がある事」でしたので、すなわち標準偏差σ を用いてその振れ幅を数値に表すことができます。

例えば5年間のリターンの統計データから、年率の平均リターン A = 5% で標準偏差σ = 10% の投資銘柄があるとすると、その投資銘柄は
約68%の確立で年率 5%±10% (+15%〜-5%)の範囲内に収まるリターンが期待でき、
約95%の確立で年率 5%±20%(+25%~-15%)の範囲内に収まるリターンが期待できる…という事になります。

各投資先のリスクとリターン

ここまで分かれば、過去のリターンの統計データさえあれば、あらゆる投資先のリターンとリスクを数値で比較する事が出来るようになります。

とは言っても、個人で一からあらゆる投資先のリターンの統計データを集めるのは相当な労力を要するので、様々な投資系の情報サイトから調べるのが簡単です。(情報化社会に感謝ですね)

今回は無料で使えるポートフォリオ検証サイト「myINDEX」から参照してみます。

「myINDEX」では以下のように過去20年間の多様な投資先の年率平均リターンとリスクが公開されています。

myINDEX.jp」より引用

各資産クラスのリターンを見ると分かるとおり、基本的な傾向として以下のような事が分かります。
・株式は債券と比べてリターンが高い反面、リスクも同様に高い。
・米国株式・先進国株式は、日本株式と同じ程度のリスクにも関わらずリターンは日本株式より高い。
・エマージング(新興国)株は、米国株式を超えるリターンだがリスクも米国株式より高い。

自分のポートフォリオをプロットしてみる

以上の情報をもとに、自分のポートフォリオを myINDEX 内のリスク-リターンのグラフの中にプロットしてみます。

私の現在のポートフォリオは以下です。

管理人の2021年3月時点のポートフォリオ
メモ

「myINDEX」内のデータは基本的に時価総額加重平均型のインデックスに基づいているので、個別株や高配当ETFを組み込んでいる私のようなポートフォリオの本当のリスクとリターンを完全に表現できるわけではありません。
しかし今回は、簡単のために個別株や高配当ETFも時価総額加重平均型と同じとして扱います。(時価総額加重平均型インデックスの説明は過去記事を参照。)

上記を myINDEX 内のツールを用いて入力した結果、上記ポートフォリオの年率平均リターンとリスクは以下という結果が出ました。

myindex で入力したデータから自動算出

横軸:リスク(標準偏差)、縦軸:平均リターンのグラフにプロットしてみると以下の通りです。(赤矢印部)

管理人のポートフォリオをプロットして、各資産クラスのリスク・リターンと比較(過去20年ベース)

私のポートフォリオは米国株式の比率が高いですが、米国株式100%のポートフォリオの平均リターン:7.5%, リスク:18.6% と比べると、リターンは約1ポイント下がりつつも、リスクが約3ポイント下がっており、少し安全性を高めたポートフォリオとなっている事が分かりますね。

まとめ

以上、今回は長期投資を行う際に大切な、リスクのリターンのバランスについて検証してみました。

投資をしていると、ついついより大きなリターンを求めてしまうものですが、大きいリターンが期待できるものは同時に大きなリスクを背負っているという事を常に忘れないようにしたいですね。

ポートフォリオに新たな商品を組み込む際には、それがどの程度のリターンが期待できるのか、そしてリスクは適正なのか、という点にも注意を払っていきたいものです。

それでは、また~👋

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