【読書感想】超訳 資本論
今回は、資本主義の本質を分析した古典『資本論』の超訳版を読んだ感想の記事となります。
『資本論』とは
『資本論』の原書は19世紀の産業革命直後のイギリスに住んでいた思想家、カール・マルクスによって書かれた本で、産業革命にあわせて発達した資本主義というものの本質を分析した功績で有名ですね。
マルクスの思想は後にマルクス主義やマルクス経済学という形に発展し、後に社会主義のソビエトを生むきっかけになっていった経緯があるため、読む前は何となく思想的にヤバい本のようなイメージを漠然と抱いていました(笑)
しかし、『資本論』で書かれている事そのものは現代にも当てはめられる程普遍的な内容となっているため、今からでも読む価値はあると考えます。
『資本論』の難点としては、文章が酷く回りくどい書き方になっているため最後まで読む気が起きないこと。
そのため、本書のように要点を抑えた書籍で読むのがオススメです。(今回紹介する超訳版は、作家兼投資家の許成準(ホ・ソンジュン)氏によるものです。)
“富"とは"商品"の集まり
『資本論』で最も重要で革新的だったと感じるのは、資本主義社会における “富" の状態とは、たくさんの “商品" が集まっている状態であると定義したところと感じます。
ここでいう “商品" とは、人間の要求を満足させてくれるもの全てを指すので、物質的な形のあるものだけでは無く、形の無いサービス、それらを提供するために必要な人間の労働力等、ありとあらゆるものが含まれる概念となります。
そして、この “商品" には金銭そのものも含まれています。
金銭は本質的に “商品(物やサービス)" の交換を円滑にするための便利な道具でしか無いため、『資本論』の定義においては金銭も “商品" の1つでしか無い、という事ですね。
商品の使用価値と交換価値
“商品" は、使用価値と交換価値の2種類の性質をそれぞれ持っていると『資本論』では述べられています。
使用価値は、消費される時に初めて意味があるものとなる価値を指します。(例えば、食べ物は空腹の要求を満たす事ができる使用価値を持っている)
一方、交換価値は他の “商品" と交換する際に初めて意味があるものとなる価値を指します。(例えば、金銭は物質としてはほとんど役に立ちませんが、他の “商品" と交換する際の道具として使う際に大きな価値を発揮します)
世の中の “商品" は、このように使用価値と交換価値をそれぞれ持っています。
資本とは、お金を稼ぐためのお金
使用価値と交換価値の事を考えると、あらゆる “商品" と比べて、お金という “商品" は使用価値はほぼ無いが、交換価値は非常に高いという際立った性質を持っていることが分かります。
そして、資本主義の世の中においては、このお金という交換価値の高い “商品" を際限無く増やしていく事が良しとされています。
このように、より多くのお金を手に入れるための元手となるお金の事を資本と呼びます。
お金を増やしていくにはどうすれば良いのか。
同じ価値の “商品" をただ物々交換しているだけでは お金という “商品" を増やす事は不可能なので、差し出そうとしている “商品" に剰余価値を付けて価値を上げてより価値の高い “商品" と交換するか、もしくは差し出そうとしている “商品" を手に入れるのに掛かる費用を抑えるか、のどちらかの手法が必要となります。
『資本論』においては、費用を抑える後者の手法を実現するために労働者は搾取されていると説いたため、後に世の中を社会主義へ進ませるきっかけになったという事ですね。
感想
『資本論』は難解な言い回しが多いため読むのが大変という事で有名ですが、本書の超訳版のような解説付きの本で読むと、マルクスがいかに資本主義というものの本質を正確に分析していたかという事に関心します。
『資本論』は後半になるにつれて資本主義批判の色合いを強める書き方になっていくのですが、これは19世紀当時のイギリスの超絶ブラックな労働環境の事を考えれば仕方のない事かもしれません。
現代においてはさすがに当時のイギリスのような労働環境は無くなりましたが、一方で私のような会社員 (=労働者) は自身が生み出す労働力と、その結果に生み出された成果を会社に多かれ少なかれ搾取されているという構図そのものは何も変わっていません。
資本主義下の労働者という搾取され続ける立ち位置から本当に逃れるためには、自身が起業して資本を獲得していく立場になるのが一番有効そうです。
(しかし、現実に多くの人が起業を目指す気概があるわけではない所を見ると、早期リタイアや FIRE という概念が流行るのも納得です。)
日本政府は今後「新しい資本主義」なるものへ進んでいくようですが、改めて資本主義の本質について考える事が出来て良かったです😌
それでは、また~👋