決算書の読み解き方⑭【ROIC】

今回は、企業の収益力を測る指標である ROIC について紹介します。似たような指標に ROA と ROE がありますが(過去記事)、それらとの違いについても触れていきます。

ROIC 投下資本利益率

ROIC とは Return On Invested Capital の略で、日本語では投下資本利益率と呼びます。(略語の呼び方はロイック)

指標は、営業利益から税金支払い分を差し引いた後の金額を、有利子負債+自己資本の合計額で割る事で求める事ができます。

ROIC

ROIC =(営業利益-税金支払い分)/(有利子負債+自己資本)

一般的に会計用語では、"資本"というと貸借対照表(BS) の右下側にある自己資本(純資産)のみを指しますが、この指標を計算する際には有利子負債の事も"資本"として計算式に加えている事が分かりますね。

この指標は、銀行等からの融資や株主からの出資から集めた資金を用いた事で、本業でどれだけ効率良く利益を稼いでいるのかを表しています。

株式の理論上の価値はどれだけ効率良く利益を稼ぐかに関わっている以上、ROIC の数値が高い企業ほど魅力的な投資対象という考え方が基本となりますね😀

ROA, ROE, ROIC の違い

類似の指標として、以前に取り上げた ROA と ROE と比較をしてみます。

ROA:総資産に対する純利益の割合を表す指標
特徴:資産全体をどれだけ効率良く使って利益を稼いでいるかを表す。
例:貸借対照表(BS)上の総資産 100億円、損益計算書(PL)上の純利益 5億円の場合、ROA = 5.0%

ROE:自己資本に対する純利益の割合を表す指標
特徴:自己資本に対して、どれだけの利益を稼いでいるかを表す。
例:貸借対照表(BS)上の自己資本 30億円、損益計算書(PL)上の純利益 5億円の場合、ROE = 16.0%

ROIC:有利子負債と自己資本の合計に対する、税引き後営業利益の割合を表す指標
特徴:銀行や株主等から調達している資金全体を、どれだけ効率良く使って本業で利益を稼いでいるかを表す。
例:貸借対照表(BS)上の有利子負債 30億円、自己資本 30億円、損益計算書(PL)上の税引き後営業利益 7億円の場合、ROIC = 11.6%

こうして見てみると、それぞれの指標はどこに着目した指標なのかが違う事が分かりますね。

ROA は貸借対照表(BS)の左側、つまり企業が持っている資産全てがどれだけ効率良く使われているのかを確認するための指標で、利益効率を上げるためには非効率な資産を処分して貸借対照表(BS)を圧縮する必要がある事が分かります。

ROE は貸借対照表(BS)の右下側、つまり株主が企業に出資している持ち分に着目、つまり株主目線で企業の収益力を評価するための指標で、利益効率を上げるためには銀行から適度に借入れを行って事業規模を拡大する等して利益を最大化する必要がある事が分かります。

そして ROIC は企業の本業の収益力そのものを端的に評価するための指標で、利益効率を上げるためにはありとあらゆる効率化を行い総合的に地力を上げていく必要がある事が分かります。

まとめ

今回は ROA と ROE に並ぶ、ROIC の指標について紹介しました。

同じように見えて、表す意味合いはそれぞれ異なる指標。指標が何を表しているかを意識して使い分けていきたいですね😄

以上、記事を読んで頂いた方の参考になれば幸いです。

それでは、また〜👋

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