【お勧め本紹介】LIFE SHIFT ~ 100年時代の人生戦略
皆さんは、資産形成をどのような目的で行っていますでしょうか。
私はブログのサブタイトルにもありますが、老後も含めた将来を豊かに暮らすための原資としての資産形成を目標として日々を生きています。
昨今は「人生100年時代」と言われ、それに備えた準備をするようにそこかしかで言われています。
この言葉が広く使われ始めたのは Google トレンドによると 2017年頃からのようですが、それは今回紹介する本が提唱した概念という事になっています。
そこで今回は、その「人生100年時代」を迎えるにあたって準備をするよう提案してくれる『LIFE SHIFT ~100年時代の人生戦略~』 という本を紹介します。
本の紹介
本書はロンドン・ビジネススクールで管理経営学教授の肩書を持つリンダ・グラットン氏と、同じくロンドン・ビジネススクールで経済学教授の肩書を持つアンドリュー・スコット氏が2016年に書いた本で(原題は 『The 100 Year Life』)、日本語翻訳版が発売されて以来、主に日本で高い人気を得ています。
そして同年に内閣と厚生労働省が人生100年時代構想会議というものを打ち立てて、本書の著者であるリンダ・グラットン氏を有識者に迎えて今後の経済政策に織り込んでいくことで検討されています。
日本での累計発行部数 33万部 (2019年時点)
2017年ビジネス書大賞 受賞
Financial Times and McKinsey Business Book of the Year Award 2016 受賞候補作品
『LIFE SHIFT』著者提言 人生100年時代における資産形成とは(マネーポスト)
The Man Who Knew wins 2016 Business Book of the Year
人生100年時代とは
現在、日本は世界で一番平均寿命が長い国となっており、100歳以上の方はすでに 8万人以上となっています。
さらに、国連の推計によれば2050年までに日本の100歳以上の人口は100万人を突破する見込みとされています。
つまり、2007年に日本で生まれた子供は107年以上生きることが予想されており、現時点で50歳未満の日本人は100年以上生きるのが一般的になる時代が今後やってくると本書は述べています。
そして長寿化が当たり前の時代においては、今までのロールモデル(お手本となる人生)はあまり役に立たなくなります。
トヨタのような巨大企業でさえ終身雇用は今後難しいと発言せざるを得ないような時代であり、今までの教育→就職→引退という3ステージで出来る古い生き方が当たり前だった時代は終わりを迎える事が予想されています。
したがって(若い世代は薄々感づいているとは思いますが)、私達の親の世代で有効だった人生の生き方は今後は参考にならなくなるため、親の世代とは違う人生の道筋をとっていく必要があります。
長い生涯
人口学者によると、日本だけでなくアメリカ、カナダ、フランスのような先進国においても 2007年生まれの子供は50%の確率で100歳以上まで生きるようになると予想されています。
このように平均寿命が今後伸び続ける理由については、昔と比べて医療が発達してそもそも子供の死亡率が劇的に下がった事、中高年の慢性疾患系の病気やがんへの対策が進歩した事、病気の早期発見・治療が可能になった事、経済発展により所得が向上して衛生的で栄養素のある食事が出来るようになった事など多くの点が挙げられています。(この辺は FACTFULNESS でも触れたところですね。)
もちろん、今まで寿命が伸び続けたからといって今後も伸び続けるかどうかは賛否両論あるようですが、本書の著者は110〜120歳くらいまでを上限に上昇し続けると予想しています。
過去の資金計画
寿命が従来よりも伸びるという事は必要な生活資金が従来よりも増えるという事を意味しています。
一方で所得の大きさに関しては、(特に日本は)30年前の頃からほとんど増えていない状況となっています。(国税庁HP)
したがって、現在の所得から将来に備えた貯蓄に回す割合を増やすか、もしくは引退を遅らせて働く年数を増やすしか、もしくはその両方が必要となってくるという厳しい現実が浮き彫りになってきます。
そこで本書のキモとなる部分ですが、この厳しい現実に対処するために教育→就職→引退という従来型3ステージの人生という固定観念を捨てる必要を捨てて新しい人生のステージを設ける必要があると説いています。
本書ではシミュレーションとして世代別の3人の人生を描いて長寿化による影響を示しており、より具体的に金銭面のイメージが湧くような工夫がされています。
3人はそれぞれ1945年生まれのジャック、1971年生まれのジミー、1998年生まれのジェーンとして設定されています。
ジャックの世代は平均寿命が70歳前後になるため、従来型の教育→就職→引退という3ステージが最もうまく機能した世代で、65歳の引退後に最終所得の50%程度の生活資金をまかない続けるためには、所得に対して毎年4.3%程度の貯蓄をしていれば事足りた世代です。
次のジミーの世代からは異変が生じるようになります。
ジミーの世代の平均寿命は85歳前後になりますが、ジャックの世代と比べて寿命が伸びる事、また公的年金や企業年金が減少していく世相を考慮に入れると、同じく65歳で引退して最終所得の50%程度の生活資金をまかない続けるためには、所得に対して毎年17.2%の貯蓄をしていく必要がある計算になります。
そして次のジェーンの世代では従来の常識が完全に通用しなくなってきます。
ジェーンの世代の平均寿命は100歳を超えるようになる可能性が高く、従来同様65歳で引退して最終所得の50%程度の生活資金をまかない続けるためには、所得に対して毎年25%の貯蓄をしていく必要がある計算になります。(さらに公的年金がもらえないという前提とすると、毎年31%の貯蓄が必要)
この毎年25-31%の貯蓄率というのを従来の就労期間で継続して維持するというのは、大多数にとっては現実的な数字ではなく、また住宅ローンや子供の学費なども計算にいれると、よほどの高収入かつ倹約家の人以外は維持するのは不可能な数字となります。
つまり、従来の教育→就職→引退の3ステージの生き方は人生100年時代にはそぐわなくなるため、人生設計の見直しが必要と本書は警告を発しているのです。
新しい資産の考え方
本書では崩壊する事が分かっている従来の3ステージの人生から、より柔軟性のある対応で人生を生き延びるために無形資産と有形資産を積み上げていく事が大切と述べています。
個人にとっての無形資産として以下の3つが挙げられています。
・生産性資産:主に仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに直接役立つスキルの事。
・活力資産:肉体的/精神的な健康と幸福、そして良好な人間関係の事。
・変身資産:新しい経験に対して開かれた姿勢を持ち、状況の大きな変化に対しても対応できる能力の事。
加えて自分の属性とは異なる人達と多様性に富んだネットワークを持っておく事。
また有形資産(金融資産)についても、先の資金シミュレーションを行った結果から分かるとおり、未来の自分を守るために十分な貯蓄や投資による資産増加を図っていく必要があります。
要点としては、より不確定になる未来に対して柔軟な対応でお金を稼いでいけるように、本業/本業以外に関する自身の人的資本を育てること、そして何かあったときに支えとなる人的ネットワークや金融資産を蓄えておく事となります。
まとめ
以上、日本で話題になった LIFE SHIFT という本について取り上げてみました。
長生きできるようになるのは本来素晴らしい事であるはずなのに、一方で十分な貯えや準備が出来ていない状態で迎えるとお金の心配から不幸な出来事へと変わってしまうのは非常に恐ろしいことですね。
なかなか人間はあまりに先の事だと自分事として捕らえられないの性質がありますが、今から十分に備えを始める人とそうでない人の間には大きな差が生まれると思うので、日々頑張りたいですね。
以上、読んで頂いた方の参考になれば幸いです。
それではまた〜。