決算書の読み解き方⑧【配当金について】
今まで貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)に関する説明をしてきましたが、今回はみんな大好き配当金💰に関する話となります。
本記事は決算書の読み解き方シリーズの続きなので、まだ読まれていない方はそちらを先に参照頂けるとより理解しやすいと思います😀
なお、今回も2019年末の資生堂の決算書をサンプルとして用いる事にします。(もはや常連ですね)
配当金とは?
配当金とは、ある期間(通常は1年間)の間に企業が生み出した純利益から、株主に対して支払われるお金の事を指しています。
“株式会社"というものは、最初に企業を立ち上げる際や、経営資金を調達したい場合に株式を発行し、それを投資家に買ってもらう事で資金を調達しています。
お金を出して株式を買う事は投資家にとってのリスクがある行為なのですが(会社が倒産して株式の価値がゼロになる等)、その対価として以下2点の恩恵を受けられます。
①会社が純利益を伸ばすことでEPSが高くなり、結果として株価が上がる事
②会社が稼いだ金額から、株主に対する出資のお礼として一部が定期的にキャッシュバックされる事
配当金は上記の②に該当しており、数年間以上の長期投資で株式を保有し続けるスタイルの投資家にとっては見過ごせない要素となります。(ちなみに私も配当金は大好物です😍)
ちなみに投資家が配当金を受け取る際には、日本企業の場合は企業が支払った配当金の額面に対して 20.315% (所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%の合計) の税金が掛かるので、投資家が最終的に受け取れる金額は企業が通知した金額より目減りした金額になることには注意が必要です🙄
例として挙げる資生堂の場合、2019年の配当金総額は1株当たり30円 x 2回だったので、年2回の株主の権利確定日時点で100株持っていた方は 100株 x (30円+30円) x (1-20.315/100) = 4,781 円を税引き後の配当金として受け取る事が出来ました。
配当金を出す企業と出さない企業
配当金に関しては、会社の状況や会社方針の違いによって配当金を出す企業と出さない企業の両方が存在します。
そもそも配当金というのは会社が稼いだ利益から、銀行への返済や利息支払、また会社の今後の成長のための設備投資等を行った上で、更にお金が余っていた場合に株主へ還元(これが配当金)、というステップで行われるのが日本の一般的な会社方針かと思います。
つまり、株主への配当金というのは会社にとって一番後回しになりやすい性質のものなので、配当金を出す企業と出さない企業が混在している状況になります。
もちろん株主への還元を優先的に確保する考えの企業もあります。特に米国では株主への還元を優先的に考える企業も多いと言われており、中には1株あたりの配当金を25年以上連続で(!)毎年増額し続けている“配当貴族" の二つ名を持つ企業もあります。(コカ・コーラや P&G、ジョンソンアンドジョンソン等、日本でも知名度の高い企業が多いですね😎)
次に、決算書を読む際に配当金に関して見るべき指標を以下に挙げてみます。
配当利回り
配当利回りとは、1株あたりの配当金を購入株価で割ったもので、株価に対するリターンの大きさを測る指標となります。
配当利回り = 1株あたりの配当金 / 購入株価
配当金目当てで株式投資をする投資家にとっては一番直接的にリターンを把握する事ができる指標なので、多くの人が注目している指標だと思います。
例としてあげる資生堂の場合は、2019年の1株あたりの配当金が 30円x2回、1年間の株価推移が6,200円〜8,600円だったので、2019年で資生堂株を買う場合の配当利回りは 0.96% 〜 0.70%程度の水準だったという事になります(20.315%の税引き前)。
なお、計算式からでも分かりますが、配当利回りというのは購入株価が下げれば下げるほど配当利回りが上がるようになっています。
したがって、機械的に積立を行うインデックス投資とは異なり、株価が安くなったタイミングを見計らって投資をする必要があるため、配当金狙いの投資は高めの難易度の投資スタイルである事には注意が必要です🙄
配当金狙いの投資はどうしても高い配当利回りの銘柄に目が行ってしまいがちですが、配当利回りが年間通してずっと高いような銘柄には注意が必要です。
配当利回りが高い状態がずっと続いている = 株価がずっと安い状態で放置されている = 不人気な銘柄という事ですが、このような場合は大抵、将来の業績悪化により配当金が減り(減配)、結果として配当利回りが下がるというような想定がされているため不人気なまま放置されている場合が多いです。
このような罠銘柄を避けるためにも、配当狙いの投資をする前には決算書に目を通して、財務状況に問題が無いかを確かめたりする事がとても大切です。
(個人的には税引き前で配当利回り4-5%もあれば十分なほど高配当と感じています☺️)
投資家のリターンに直接的に関係する指標は上記の配当利回りだけですが、企業がどれだけ"株主思い"かは以下の指標を見る事で測る事ができます。
配当性向
配当性向とは、企業が出す配当金総額を純利益で割る事で求める事が出来る指標で、企業が年間に儲けた利益のどれだけを配当金として株主へ還元しているか、という割合を知る事ができます。
なお、計算式の分子にある"配当金総額" は簡易的に 1株当たりの配当金 x 期中平均発行済み株式数(自己株式を除く) と置き換えることができるので、すなわち1株あたりの配当金 / EPS の計算式でも配当性向を求める事ができます。
配当性向 = 配当金総額 / 親会社に属する純利益
もしくは
配当性向 = 1株あたりの配当金 / EPS
例として挙げる資生堂の場合、2019年の配当金総額 23,965 M¥ (239億65百万円)、親会社に属する純利益 73,562 M¥ (735億62百万円)だったので、23,965 M¥ / 73,562 M¥ = 32.58% が配当性向という事になります。
日本企業の場合だいたい 30%~40%くらいが平均的な配当性向と言われていますので、資生堂も平均的なレベルにあるという事が分かりますね。
総還元性向
総還元性向とは、先ほどの配当性向の計算式の分子に「自社株買い」の金額を加える事で算出する事が出来る指標で、これにより企業がどれだけ"株主思い"なのかを知る事ができます(笑)
総還元性向 = (配当金総額 + 自社株買い金額) / 親会社に属する純利益
例として挙げる資生堂の場合、キャッシュフロー計算書(Page 18)を見ると 2019年の自社株買いの金額は22 M¥でほとんど行っていないので、総還元性向は配当性向とほぼ同じという結果になります。
総還元性向は企業によって本当にまちまちですが、気になる企業があれば調べて比較してみると面白いと思います😄
企業が出来る株主への還元の方法として、配当金の他には自社株買いというアプローチがあります。
自社株買いをすると株式市場に出回る株式の数が減ることになりますが、EPS = 純利益 / 期中平均発行済み株式数(自己株式を除く)の関係から、自社株買いをして市場に出回る株式の数が減少すると分母が小さくなるのでEPSを高める効果が生まれます。
株価 = EPS x PER の関係である事から、結果として株価を高める効果が生じるため、自社株買い = 株価を上げる効果を与える株主還元の手法となるわけです。
この方法ならば配当金のように配布する度に20.315%の課税をされる事も無いので、効率の観点から配当金よりも自社株買いによる株主還元を好む投資家もいます。
まとめ
以上、決算書から読み取れる配当金に関する説明をしてみました。
配当金は投資家にとって完全なる不労所得、まさに「お金がお金を生む💰」サイクルを実感させてくれるので、罠銘柄さえ避けられればヤミツキになる事間違い無しです(笑)
配当利回り = 1株あたりの配当金 / 購入株価
配当性向 = 配当金総額 / 親会社に属する純利益 もしくは 1株あたりの配当金 / EPS
総還元性向 = (配当金総額 + 自社株買い金額) / 親会社に属する純利益
以上、今回の記事が読んで頂いた方の役に立っていましたら幸いです☀️
それでは、また〜。