決算書の読み解き方⑪【キャッシュフロー計算書】

今回は、キャッシュフロー計算書から読み取れる「フリーキャッシュフロー」という概念について説明します。

キャッシュフロー計算書を見る際に鍵となる重要な概念であり、また高配当株投資を行う際にも(個人的に)重要視しているポイントなので、これから高配当株投資を行うという方は是非チェックしてみてください😃

フリーキャッシュフローとは?

フリーキャッシュフローとは、会計期間(基本的に1年間)の間に、その名の通り企業の手元にあって自由に分配できたキャッシュの事を指しています。

キャッシュフロー計算書からは、「営業活動によるC/F」に「投資活動によるC/F」を足し合わせる事で求められます。

☆フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュフロー = 営業活動によるCF + 投資活動によるCF

一般的に企業は業績を維持するために継続的な投資をしているものなので、「投資活動からのC/F」はマイナスの値をとります。

そう考えると、フリーキャッシュフローとは「企業が1年間の間に稼いだキャッシュ」から「投資に回したキャッシュ」を差し引いた後に残った、自由に分配できるキャッシュの事を指している事が分かります。

このフリーキャッシュフローは「財務活動によるC/F」の項目に表されている銀行への借入返済や、株主への配当金、自社株買いを行うための資金源となります。

フリーキャッシュフローは株主への配当金の源泉

先の説明から、フリーキャッシュフローが潤沢にある会社は安定した経営が出来ている事の何よりの証左であり、また経営的に無理する事なく配当金や自社株買いで株主へ還元できる、という事になります。

ここで、高配当株投資に役立つ指標としてC/Fベースの配当性向の見方を紹介してみます。

配当性向は以前紹介した記事では 配当金総額 / 親会社に属する純利益 で表されると説明しましたが、これはP/L上に出てくる"純利益"ベースでの計算であり実際のキャッシュの流れに基づいたものではありません。

配当金は当然キャッシュ(現金)で株主へ還元されるものであるので、併せてC/Fベースでの配当性向もチェックしておくと、より確信を持って高配当株投資を行う事が出来るようになります😊

☆配当性向(C/Fベース)

配当性向(C/Fベース) = 配当金のキャッシュフロー / フリーキャッシュフロー

以上の事柄を、この決算書シリーズでサンプルとして取り上げている2019年末の資生堂の決算書を用いて見てみます。

2019年末の資生堂のキャッシュフロー計算書は、

  • 営業活動からのC/F : 75,562 M¥(755億62百万円)
  • 投資活動からのC/F : △202,823 M¥(2028億23百万円)  注) △はマイナスの意

となっているので、フリーキャッシュフローは 75,562 M¥ – 202,823 M¥ = △127,261 M¥(△1272億61百万円)という事になり、この年は営業活動からのC/Fをはるかに上回る金額を投資活動へ回したことが分かります。

財務活動からのキャッシュフローを見ても、2019年は例年と異なり銀行から多額の借り入れを行っていますね。

IR BANK より引用。フリーキャッシュフローは右上参照。

決算書に書かれた内容によると、資生堂はこの年に米国での事業強化のために米国の化粧品ブランドを買収していたので、それが「投資活動によるC/F」を増大させ、結果としてフリーキャッシュフローが大幅なマイナス⏬になったそうです。

経営の安定性の面からみれば大きな金額の企業買収はリスクがありますが、この買収によって更なる業績拡大が期待できるので、今後のキャッシュフローがどう推移するのか楽しみでもありますね😌(当面は新型コロナの影響で化粧品業界は厳しいでしょうが…)

配当性向(C/Fベース)については、2019年の配当金として 22,028 M¥(220億28百万円)を出していますが、この年はフリーキャッシュフローが無い(どころかマイナス)なのに無理して配当金を出していた事になります💦

しかし、これは見方を変えれば「会社が苦しいときでも株主のへの還元は欠かさず行う😤」という意思表示でもあります。

資生堂は配当性向30%弱、配当利回りが1%以下のため決して高配当銘柄というわけではありませんが、高配当株投資を行う際には企業がどのくらい株主への還元を考えていてくれるか、というのも考慮に入れておきたいところですね😄

まとめ

以上、キャッシュフロー計算書を見る上で重要なフリーキャッシュフローの考え方について解説してみました。

フリーキャッシュフローが分かるようになるとより深く銘柄分析が出来るようになり、特に高配当株投資を成功させる確度を上げることが出来るようになるので、気になる企業があれば是非チェックしてみて下さい😉

それでは、また~👋

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