リスクとリターンのバランスを考える(続)【効率的フロンティア】

2023年5月22日

本記事は、前回書いた記事(リスクとリターンのバランスについて考える)の続きとなりますので、先にそちらを読んで頂けたら幸いです😄

株式と債券の組み合わせたポートフォリオを作る際に参考となる考え方、効率的フロンティアについて触れたいと思います。

リスクとリターンのバランス(おさらい)

前回記事で書いたとおり、株式や債券といった投資先は標準偏差という考え方を用いて年率の平均リターンとリスクを数値化して表現できる事が分かりました。

例えば、年率平均リターン = 5%、リスク(標準偏差)= 20% の株式があるとしたら、その株式を長期投資した際に期待できるリターンは 7割近い確率で 5% ± 20% に落ち着く…といったような感じです。

そして、株式や債券といった投資商品の年率平均リターンとリスク(標準偏差)は、過去のデータから推定する事ができ、基本的な傾向として株式はハイリスク・ハイリターン、債券はローリスク・ローリターンの特徴がある事も分かりました。

長期投資を実践する場合は、株式や債券といった様々なリスク・リターンの特徴を持つ資産クラスを組み合わせてポートフォリオを作り、その中で株式や債券の配分を適宜調整することで運用を行っていく事になります。

株式と債券の配分を変えたポートフォリオで検証

それでは、株式や債券といった資産クラスは、ポートフォリオの中でどのような割合で配分させていけばよいのでしょうか。

ここからは実例として、株式と債券の2種類からなるポートフォリオの比率を少しずつ変えてみる事で、リスクとリターンがどのように変化をするのかを検証してみたいと思います。

検証は、以下のように株式と債券の比率を0%〜100%まで 10%刻みで配分を変化させたポートフォリオを用いてリスクとリターンを比較してみます。

検証ポートフォリオ米国株式比率米国債券比率
S100100%0%
S90:B1090%10%
S80:B2080%20%
S70:B3070%30%
S60:B4060%40%
S50:B5050%50%
S40:B6040%60%
S30:B7030%70%
S20:B8020%80%
S10:B9010%90%
B1000%100%

なお、今回は 株式:米国株式市場全体債券:米国債券市場全体の組み合わせでポートフォリオを組んでみた場合で検証します。

また、各ポートフォリオのリスクとリターンのデータは、過去データからリスク・リターンを検証する事のできる「Portfolio Visualizer」のサイトを用いて算出した値となります。

その結果、過去20年間のデータに基づいて出した各ポートフォリオのリスクとリターンは、以下のグラフに表す結果となりました。

グラフにしてみると、ポートフォリオ内の株式と債券の配分の違いによって次の傾向がある事が分かります。

  • 株式の比率を増やすと、リスクは増える⬆️がリターンも増える⬆️
  • 債券の比率を増やすと、リスクは減る⬇️がリターンも減る⬇️
  • 債券100% のポートフォリオと 株式20%:債券80% のポートフォリオはリスクは同程度であるにも関わらず、株式20%:債券80% のポートフォリオの方がリターンは上回る

一般的に債券は株式よりもリスクの低い安全資産と言われていますが、債券100% とするよりも株式を少し混ぜた方が、同程度のリスクを維持したままでリターンを上げる事ができるのは興味深いですね。

また、ひたすらに高いリターンを得ようと思ったら株式100% のポートフォリオですが、債券10%~30% くらいまでなら、株式100% からリターンをあまり損なう事なくリスクを下げられる事も分かります。

参考までに、グラフにプロットした詳細なデータは以下です。

$10,000 を投資して2000年から20年間運用した想定。年1回の頻度で比率調整あり。

注意点として、標準偏差においては債券100% と株式20%:債券80% で同程度となりますが、Max Drawdown (暴落時の最大下落率) に関しては株式20%:債券80% の方が債券100% よりも大きくなっています。

したがって、○○ショック等の暴落があった際に、どれくらいの下落率までなら心穏やかにいられるのか、すなわち個々人のリスク許容度に応じて債券の比率を少しづつ調整していくのが良さそうですね。

効率的フロンティア曲線について

今回グラフに記したプロットを結んだ曲線の事を、効率的フロンティア曲線と呼びます。

この曲線は「同程度のリスクの際に最も効率良く高いリターンが得られるポートフォリオ」のリスクとリターンをプロットする事で描く事ができます。

この曲線上に乗るようにポートフォリオを組むと、(理論上は)リスクを抑えながら最大リターンを得られるというわけですね。

例えば、米国株式と米国債券の2種類しか存在しない世界であれば、効率的フロンティア曲線は下図に書いた赤線のようになります。

しかし、現実の世界には米国株式と米国債券以外にも様々な投資先が存在しています。(日本株式/債券、新興国株式/債券、金、REITなど)

そういった数多くの投資先を組み合わせた多様なポートフォリオのリスクとリターンをプロットしていくと、下図の赤線のように描かれる曲線が出てくるので、それが現実世界での効率的フロンティア曲線と言えます。

myINDEX」利用者のポートフォリオ一覧がプロットされたグラフを引用

適正なポートフォリオは人それぞれ & 注意点

以上、今回は株式と債券からなるポートフォリオの検証と、効率的フロンティア曲線という考え方について書いてみました。

ポートフォリオの組み方は個人のリスク許容度によるので本当に人それぞれとなりますが、同じリスクを取るのなら少しでも高いリターンを得られるように心掛けたいですね。

ただし注意点として、今回紹介したようなリスクとリターンはあくまでも過去のデータに基づけばそうだったというだけで、今後も必ず過去データと同じように推移するわけでは無い、という所は忘れないようにする必要があります。

効率的フロンティア曲線上にあるポートフォリオが、今後も必ず高効率のリターンを生み出す事を保証するわけでは無い事を頭の片隅に入れつつ、自分にとって最適で心地よい状態のポートフォリオを時間をかけて探っていくのが良さそうですね。

それでは、また〜👋

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