決算書の読み解き方⑨【キャッシュフロー計算書】
今まで解説してきた決算書の読み解き方シリーズでは貸借対照表(B/S)および損益計算書(P/L)を取り上げてきましたが、今回の解説ではキャッシュフロー計算書(C/F)を取り上げたいと思います。
貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)と比べるとあまり着目される事が少ないように思いますが、実際は B/S と P/L と同等以上に重要な計算書です。
読み解けるようになると投資先の企業の状況をより詳しく把握できるようになると思いますので、是非チェックしてみてくださいね😌
キャッシュフロー計算書(C/F)とは?
キャッシュフロー計算書とは、会計期間の間に企業がキャッシュ(現金など)をどれだけ手に入れ、何に使い、手元に残したのかを表した計算書となっています。
“キャッシュ"というのは日本語で言えば"現金"の事ですが、ことビジネスや会計の世界では “Cash is King 👑(現金は王様だ)" という言い回しがあるくらい、重要なものとして捉えられています。
なぜキャッシュが重要なのかについては色々な考えがあるでしょうが、私個人は以下の2点からキャッシュが重要視されていると考えています。
①土地や不動産、その他あらゆる資産と比べて、キャッシュ(現金)という資産は最も速く“お金として使う"事ができる存在であり、圧倒的な万能性があるため。
②企業が倒産するのは手元からキャッシュが無くなるときであり、キャッシュはすなわち企業にとっての生命線にあたるため。
簿記を学ぶ以前には私は勘違いしていたのですが、企業というのは損益計算書(P/L) 上でどれだけ赤字を垂れ流しても、それだけでは倒産する事はありません。
ではどういう時に倒産するのかというと、手元のキャッシュが尽きて期日までに銀行への返済ができなくなったり、取引先への代金の支払いができなくなった時に倒産するのです🌀
企業がどれだけ土地や不動産を持っていたとしても、それをそのまま返済や代金の支払いに使う事は普通できないため、企業としては手元のキャッシュが尽きないように計画的に経営していく事が何より大切な事となります。
以上、キャッシュがとても重要なものと説明してみました。
企業にとってそれほど重要なキャッシュですが、それを企業がどれだけ稼いで、何に使い、どれだけ手元に残したのかを表したものが今回説明するキャッシュフロー計算書となります。
英語では Cash flow statement、略して C/F と呼びます。
キャッシュフロー計算書(C/F)は主に以下の4種類の項目から構成されています。
営業活動によるキャッシュフロー
営業活動によるキャッシュフローとは、企業が事業を行う事で生み出したキャッシュフロー(キャッシュの流れ)、つまりどれだけのキャッシュをその期間に儲けたのかを記載しています。
このキャッシュフロー計算書は主に損益計算書(P/L) での税引前純利益をスタートとして、P/Lに記載される"利益"と実際のキャッシュフローのズレを調整する形式で集計されている事がほとんどです。
したがって、企業が事業を通じて直接的にどれだけのキャッシュを稼いでいるのかを知るためには、損益計算書(P/L)では無くこの「営業活動によるキャッシュフロー」を見る必要があります。
P/Lに記載される"利益"と、実際に儲けた金額である「営業活動によるキャッシュフロー」がずれる理由については、主に以下の3点が影響しています。
①減価償却費
②取引先から未回収の代金(売掛金)の回収状況、逆に取引先への未払いの代金(買掛金)の支払状況等
③商品在庫の増減
①の減価償却費は、土地/不動産/機械設備等の高額なものを購入した際の費用を分割払いのように損益計算書(P/L)へ計上されているものです。
例えば 1,000万円の設備を購入して10年間で寿命を迎えると仮定するならば、1000万円÷10年間 = 100万が減価償却費となり、損益計算書(P/L)に毎年100万円、10年間継続して費用として計上されるようなイメージです。
しかし実際のキャッシュの流れとしては、毎年100万円を10年間連続して支払っているわけでは無いので、ここで損益計算書(P/L)と実際のキャッシュの流れにズレが生じるわけです。
②の売掛金/買掛金等についても、損益計算書(P/L)の帳簿上では収入や費用として記録されますが、実際に口座に振り込まれたり、逆に支払ったりするのは時間差があったりするのでここでも損益計算書(P/L)と実際のキャッシュの流れにズレが生じます。(クレジットカードの一括払いのイメージが近いですね。)
③の商品在庫についても、販売のために生産したり仕入れたりした商品在庫は"費用"ではなく一旦は"資産"として帳簿に計上されるため、損益計算書(P/L)の方に"費用"としては計上されないという簿記会計の特性があります。
しかし実際には、販売のために生産したり仕入れたりした商品はお金を使って調達しているものなので、ここでも損益計算書(P/L)と実際のキャッシュの流れにズレが生じるわけです。
少し難しい説明になってしまいましたが、以上の①~③の理由から損益計算書(P/L)とキャッシュの流れには様々な点でズレが生じるようになっているので、企業が直接的にどれだけ稼いでいるのかを知るためには営業活動によるキャッシュフローの項目を見る必要があります。
投資活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローとは、その名の通り設備投資や企業買収などに用いたキャッシュの流れを表しています。
将来に向けて業績を伸ばしてさらなる成長をしていくためには、設備や技術取得のための投資は必要不可欠な場合がほとんどなので、この項目を見ると今後その企業が何に力を入れていくつもりなのかが分かる…かもしれません。
財務活動によるキャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフローとは、銀行への返済、逆に銀行からの融資、他には株主への配当金などに関連したキャッシュの流れが記載されています。
配当金で配布する金額や、自社株買いに用いる費用はこの項目に書かれているので、個人的に良く見る項目です😉
期末残高
期末残高には、上記の3つのキャッシュの流れを経て最後に手元にどれだけキャッシュが残ったのかが記載されています。
まとめ
以上、キャッシュフロー計算書の概要について説明してみました。
キャッシュというのは企業にとって生命線なので、その流れ(キャッシュフロー)が分かれば投資先の企業の状態がより直接的に把握👌する事ができるようになります。
次回は、営業活動/投資活動/財務活動のキャッシュフローから、企業がどのような成長段階にあるのか読み解く方法について説明したいと思います。
以上、本記事が読んで頂いた方の参考に少しでもなっていれば幸いです✨
それでは、また~👋