決算書の読み解き方⑤【損益計算書】
今回は、決算書を構成する損益計算書(P/L)の解説をしていきます。最初の概要記事を読んでいない場合は、そちらを先に参照して頂けるとより理解度が高まると思います。
貸借対照表(B/S)の解説もしているので、良ければそちらも併せて読んで頂けると嬉しいです。
損益計算書とは?
損益計算書(そんえきけいさんしょ)とは、ある期間内の間(普通は1年間)において企業がどれだけ儲かったのか、あるいは損失を出したのかを表した資料です。
損益計算書は商品やサービスの売上高をスタート地点として、最終的に企業の手元に残った利益(純利益)をゴール地点とした構成となっています。
売上高から純利益まで導くまでは世界共通ですが、各国が採用している会計基準によって売上高→純利益の中間の計算の仕方が異なってきます。
今回は、馴染み深い(?)日本基準の会計基準に沿って説明していきます。
売上高から純利益まで
売上高から純利益を求める段階を図で表すと以下のようになります。
左の売上高をスタート地点として、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前利益、そして最後に純利益を算出しているのが分かります。
以下、順番に解説していきます。
今回も例として2019年末の資生堂の決算書を用いて説明します。
売上高
売上高は、その名の通り商品やサービスを販売した事で得た金額そのものになります。
したがって、例えば1個1,000円の商品を100個販売できたとしたら売上高はそのまま100,000円という事になります。
資生堂の場合、2019年の売上高は 1,131,547 M¥ (1兆1315億47百万円) となっています。(すさまじい金額ですね🙄)
売上総利益
上記の売上高から、売上原価を引いた値が売上総利益となります。
売上原価とは売れた分の商品を製造するのに直接掛かった材料費や仕入れ費、製造費、製造に要した費用や人件費など多岐にわたります。
売上高から売上原価を引いて求めた売上総利益は粗利と呼ぶときもあり、こちらの方が馴染みが深い方もいるかもしれません。
いずれにせよ売上総利益は、商品やサービスが売れた後、どれだけの利益が手元に残ったのかを知る上で一番直感的に理解がしやすい項目だと思います。
資生堂の場合、2019年の売上原価が 254,844 M¥ (2548億44百万円) なので、先の売上高から売上原価を差し引くと 1,131,547 M¥- 254,844 M¥ = 876,703 M¥ (8767億3百万円) となります。
営業利益
次に挙げる営業利益は、先に挙げた売上総利益から販売費と一般管理費を差し引いた後に残った金額となります。
販売費と一般管理費は、営業/マーケティングなどに用いた営業費用👔や、広告を出すために用いた広告費用📺、新たな商品を開発するための開発研究費🔬、私のようなサラリーマンの出張する際に発生する旅費交通費🚅、顧客との接待交際費用🍻、オフィスの賃借料🏬、水道光熱費、保険料 etc. といったような様々な項目が含まれています。
(これらの共通点としては、自社の商品やサービスを売るために必要な経費、というところですね。)
また上記以外にも大きな項目として、企業が持つ建物/機械/車などの高価な資産は、経年劣化等によって価値が下がる事から複数年に渡って資産価値の一部を「費用」として計上していく会計上の処理が行われており、減価償却費という項目で複数年に渡って “原価" と “販売費および一般管理費" の中に含むように計上されています。
このようにして算出された営業利益は、企業の収益力(=お金を稼ぐ力)💪を見る上で重要視されている項目となり、類似の他社でどちらに投資するのが良いかを判断する際に、この項目を比較して収益力が優れるほうに投資する、という判断をする事ができるようになります。
資生堂の場合、2019年末の販売費および一般管理費は 762,871 M¥ (7628億71百万円)だったので、先の売上総利益 876,703 M¥から差し引いた 113,832 M¥ (1138億32百万円) が営業利益となります。
経常利益
次に挙げる経常利益は、企業が持っている有価証券からの受取利息や、関連会社からの受取配当金などによる収益、また逆に社債や借入金への利息返済で支払ったお金を反映したものになります。
これらは本業によって稼いだお金では無いので、受取利息や受取配当金は営業外収益(もしくは金融収益)、支払利息などは営業外費用(もしくは金融費用)と項目分けすることもあります。
資生堂の場合、営業外収益が 5,674 M¥(56億74百万円)、営業外費用が 10,766 M¥(107億66百万円) なので、営業利益 113,832 M¥を起点に +5,674 M¥ – 10,766 M¥ をした結果の 108,740 M¥ (1087億40百万円) が経常利益となります。
税引前利益
税引前利益とは、会計期間(普通は1年間)の間に生じた何か特別な出来事による利益や損失を反映させたものになります。
この特別な出来事による理由というのは企業によって本当に様々なものがありますが、基本的には通常業務とは関係無い事によって生じた利益🎊や損失🌀を計上しています。
2019年末の資生堂の場合、主に投資用有価証券を売却したことによる利益を中心とした特別利益 4,103 M¥(41億3百万円)、一方で固定資産を処分した事による損失、事業構造改善費用、構造改革費用といった項目で合計5,465 M¥(54億65百万円) の損失を計上しています。
その結果、先ほどの経常利益をベースに 108,739 M¥ + 4,103 M¥ – 5,465 M¥ ≒ 107,378 M¥ (1073億78百万円) が税引前利益となります。
純利益
ようやく最後に純利益にたどり着きました😅お疲れ様です。
純利益は、先ほどの税引前利益から税金を差し引いて残ったものであり、ひいてはこれが会社の純資産として残るものになります。
資生堂の場合、諸々の税金 30,075 M¥(300億75百万円) を支払った残りの、77,301 M¥(773億1百万円) が純利益となります。売上高1兆円超えだったところから随分と減ったものです😓
会社の手元に残った純利益はもちろん会社のもの(=株主のもの) という事になり、企業の経営を預かっている経営者(つまり、社長や役員の方々)は株主の承認を得た上でこのお金を様々な事に使います。
具体的には会社の今後の更なる成長のための投資財源にしたり、株主へ配当金💰という形で還元したりしています。
このようにして企業が過去に稼いできたお金は、貸借対照表(B/S)の純資産の部にある「利益剰余金」という項目に積み重っていきますので、ここを見て企業がお金を稼いで成長してきた歴史を感じるのも、また乙なものです😌
まとめ
以上、今回は損益計算書(P/L)の読み方を説明してみました。
貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)が分かるようになると、投資に役立つのはもちろん、会社員のスキルとしても様々なところで役に立つ事があるので、勉強して損はありません🌟
次回は、損益計算書から企業の収益力(=稼ぐ力)を分析する方法について説明したいと思います。
それでは、また〜。