決算書の読み解き方⑫【ROAとROE】
今回は、企業がどれだけの「稼ぐ力(収益力)」を持っているのか、という事を測るための指標について紹介します。
長期目線での個別株投資を行う際の銘柄選びの理想は、がんがん稼いでいて事でEPSがどんどん上がり⬆️、潤沢なキャッシュフロー💰を生み出している企業に投資する事と考えます。
今回取り上げるROAとROEの指標を用いれば、企業間の「稼ぐ力(収益力)」を簡単に比較できるようになるので、投資を考えている銘柄が複数ある場合には、是非これらの指標を見て比較してみる事をおすすめします😄
なお、今回も2019年末の資生堂の決算書をサンプルとして用いる事にします。
ROA (Return On Assets) 総資産利益率
ROA とは総資産に対する純利益の大きさの事を指しており、企業が持っている総資産(Assets)に対してどの程度のリターンが得られているのかを表した指標となります。
ROA = 当期純利益 / 総資産
株式会社の第1の目的は株主のために利益を上げる事なので、利益を効率良く稼ぐためには企業が持っている総資産をフル活用していく事が常に求められています。(資本主義の世界はシビアですね💦)
そこで企業が保有している資産の規模に対して、どの程度効率良く稼いでいるのかを知るために作られた指標が ROA となります。
ROA の公式に表されるように、企業が稼いだ当期純利益を総資産で割ってやる事により、企業がどの程度効率良く総資産を活用しているのかを数字で比較する事ができるようになるわけです。
例として挙げる資生堂の場合、2019年末時点の総資産 1,218,795 M¥ (1兆2187億95百万円) に対して親会社に属する純利益が 73,562 M¥(735億62百万円) なので ROA = 73,562 / 1,218,795 = 約6.0% という事になります。
日本企業の場合、ROA が5%を超える状態は「稼ぐ力(収益力)」が強い企業と言えます。資生堂は本当に優秀な企業ですね😄
ROE (Return On Equity) 自己資本利益率
ROE とは自己資本に対する純利益の大きさの事を指しており、企業が持っている自己資本(Equity)に対してどの程度のリターンが得られているのかを表した指標となります。
ROE = 当期純利益 / 自己資本
先に紹介した ROA と比べると、ROE の計算式は分母が「自己資本」となっています。
「自己資本」というのは貸借対照表(B/S)において、株主から調達した資本金であったり過去に積み重ねてきた利益で構成されているもので、借入金と違い誰にも返す必要がない資金となります。(過去記事を参照)
株式会社というものは、利益を追求するために株主から資本金を集めて事業を行い、更なる利益を生み出していく事を出資者(株主)から期待されています。
株主からすると、自分が企業に出資した資本金に対してどの程度の利益が上がっているのか、というのはとても気になる点です。
そんな折、ROE という指標は、株主の視点から見て ROA よりももっとダイレクトに「出資した資本金」に対して「どのくらいの利益を生み出したのか」、という事を端的に表している指標です。
以上から、自分が出資して株式を持っている企業が、どの程度の効率でその資本金を使って利益を上げているのか、という事を知る事ができる ROE は、株式会社の稼ぐ力を測る上でとても重要な指標の一つと考えられています。(逆に雇われ経営者からすると恐ろしい数字ですね😅)
例として挙げる資生堂の場合、2019年末時点の自己資本 496,438 M¥ (4964億38百万円) に対して親会社に属する純利益が 73,562 M¥(735億62百万円) なので ROE = 73,562 / 496,438 = 約14.8% という事になります。
日本企業で ROE が10%を超えるほどの収益力を持つ企業は中々いないので、やはり資生堂は強力な「稼ぐ力(収益力)」を備えている会社だという事が分かりますね😃
デュポンの公式
ROE が高い方が稼ぐ力が強い事は分かったけれど、ここで一旦 ROE がどのように構成されているかを見てみましょう。
ROE は、「デュポンの公式」と呼ばれている以下の形に分解する事ができます。
ROE = (当期純利益 / 売上高) × (売上高 / 総資産) × (総資産 / 自己資本)
ROE = 純利益率 × 回転率 × 財務レバレッジ
上記の公式は、ROE を 「利益率」「(商品 or サービスの)回転率」「財務レバレッジ」に分解して、これらの3つのどれか (あるいは全部)を上げていけば ROE が向上するという事を明らかにした式となります。
具体的には、以下が重要なポイントになってきます。
- 純利益率を向上するためには → 原価や経費を抑えて利益率を上げる
- 商品の調達から売上に変わるまでの期間(回転率)を短縮するには → 商品を在庫にただ眠らせておくだけの期間が短くなるように工夫する
- 財務レバレッジを上げる → 自分から手出しする資本金で全てを賄うのではなく、外部のお金(借入金など)を活用する
最初の2つ(利益率、回転率)は事業の利益を高めていくためにはどちらも重要だという事は直感的にも分かりやすいですね😀
3つ目の財務レバレッジとは、総資産 / 自己資本 の計算式となっているため、自己資本比率の逆数という事が分かります。すなわち、自己資本が少なければ少ないほど良いという考え方になります。
自己資本比率に関してはあまり低すぎるのも経営的に問題がありますので、投資先を探す際に ROE を見るときには利益率、回転率がどうなのかを合わせて見ておくと良いですね😉
ちなみに、先に紹介した ROA = (当期純利益 / 売上高) x (売上高 / 総資産) = 利益率 x 回転率 となるので、ROA が高い企業は利益率、回転率が高いという事になり、ROE も高くなる傾向にあります。
自己資本比率の説明については過去記事「決算書の読み解き方③【貸借対照表】」を参照ください。
「デュポンの公式」とは米国🇺🇲の超大手の化学製品のメーカーであるデュポン・ド・ヌムール (DuPont de Numours, 1802年創業の老舗) という会社が、自社の収益性を上げるために何をすれば良いのかを把握するために発明したとされており、この公式を用いたおかげで収益性が上がり、また新規事業にも成功して現在の地位を築くのに役立った事で有名です。
例として上げる資生堂の場合、2019年末の決算書では純利益率 6.5%、回転率 92.8%、財務レバレッジ 245% となります。
回転率 92.8% は他企業と比べて突出して高いというわけでは無いため、資生堂の高い ROE は
- 確固たる高いブランド力を構築した上で、化粧品という高い利益率が出せる商品を取り扱っている
- 高い与信(銀行からの信頼の高さ)を用いて、自社の資本以上のお金 (借入金) を使って大きい規模で稼いでいる
という形で成立している事が想像できますね😆
このように、企業がどのようなビジネス上の強みを持っているのかをデュポン公式から想像してみるのも面白いです。
まとめ
今回は「稼ぐ力(収益力)」の指標となる ROA と ROE について説明してみました。
この指標を見ることで、投資を考えている企業がしっかりと稼げているかどうかを測る事が出来るため、長期的に投資しようと考えている銘柄があれば是非チェックして、他社と比較してみることをお勧めします😄
以下、今回の指標のまとめです。
ROA = 当期純利益 / 総資産
ROE = 当期純利益 / 自己資本
ROE = 純利益率 × 回転率 × 財務レバレッジ (デュポン公式)
以上、記事を読んでくださった方の参考になれば幸いです😊
それでは、また〜👋