【まとめ&感想】教養としての投資

今回は、最近読んだ本「ビジネスエリートになるための教養としての投資」のまとめ&読書感想的な記事となります。

投資に関する本は日々読むようにしていますが、その中でも今回特に印象に残り、投資に関して本質的な事を書いていると感じた本となります。

投資をするとはどういう事なのか、またどのような企業へ投資をすれば良いのか、といった示唆に富んだ本なので、私のような投資初心者や、もしくはこれから投資を始めてみたいといった方が投資に対する姿勢や考え方を学ぶには最良の本の一つと思います。

著者の紹介

著者の奥野一成氏は、日本の大手の機関投資家である農林中央金庫の社内ベンチャーとして著者自らが立ち上げた「農林中央バリューインベストメンツ株式会社(NVIC)」の CIO(常務取締役 兼 最高投資責任者)の方です。

著者の奥野氏は、もとは日本長期信用銀行(長銀)での営業職を経て長銀証券での債券ディーラーをされていたバリバリの職業トレーダーだったそうです。

しかし、1998年に長銀が経営破綻。それを契機に、外資の証券会社へ入社してロンドン駐在勤務をしながら夜間はMBA取得のためにロンドンのビジネススクールへ通うという生活を送ります。

そのロンドン駐在時代に読んだウォーレン・バフェットの著作をきっかけにバフェット流のバリュー投資の研究を始め、日本へ帰国後はトレーダー稼業では無く、腰を据えた長期投資に取り組みたくなり農林中央金庫へ入社。

その農林中央金庫の主要な投資先であるファンドと付き合う内に、彼らが(世間一般のイメージと異なり)かなり熱心に企業価値評価を行い、一旦投資したら売り買いはせずに5年以上は保有するようなバフェット流の投資を実践している事に感銘を受けます。

一方、日本には同じようにバフェット流の投資をしているファンドが無い事に気づき、「バフェット流の投資でリターンを上げる」という運用コンセプトを実証するため NVIC を設立。

その結果、他の日本株の運用ファンドよりも NVIC の方が大きなリターンを得る事ができたため、農林中央金庫の自己運用資金だけでなく企業年金や政府系ファンド、他の機関投資家からまでも支持を得るまでに至っています。

どのような企業に投資すれば良いのか

NVIC では、投資方針として「構造的に強靭な企業」への投資を掲げています。

「構造的に強靭」とは、次の3つの要素に支えられており、この3つの要素が弱まらない限りはその企業の株式をずっと保有し続けられると述べられています。

①高い付加価値
②高い参入障壁
③長期潮流

①高い付加価値とは

高い付加価値とは、その企業がやっている事業やサービスは「本当に世の中に必要とされているか?」と言い換える事が出来ます。もっと言うならば、その事業やサービスの存在意義はどこにあるのかという事です。

著者は例としてディズニーを挙げています。

ディズニーは一言で言えばキャラクターコンテンツを提供する企業ですが、ディズニーが世の中に提供している価値を細かく見ていくと、例えば以下のようなものがあります。

・いつの時代に見ても、どの世代が見ても普遍的な面白さを感じさせ、誰にでもお勧めできるディズニー映画
・友人恋人家族と楽しい休日を過ごす場所として間違いない選択肢となるディズニーリゾート等の遊園地施設
・主に子供向けのプレゼントとして鉄板の存在であるディズニーキャラクター商品

つまり、ディズニーという企業は上記を通して「大切な人に喜んでほしい」という消費者の課題を解決しているのですね。

世界を見渡しても上記全ての代わりになるような企業というものは未だ存在していないため、ディズニーランドの入園料やディズニー商品が多少価格が張っていたとしても、多くの人が喜んで代金を支払うというわけですね。

②高い参入障壁とは

高い参入障壁とは、「今更その人達と真っ向勝負をしようなんて思わないほど、圧倒的に強いか?」ということになります。

著者は先程のディズニーに加えコカ・コーラを挙げています。

清涼飲料水のメーカーというのは日本にいるとたくさんあるように感じますが、日本以外に目を向けてみるとコカ・コーラとペプシコーラが市場を寡占している状態となっています。

これはつまり、今更コカ・コーラと真っ向勝負をしようとしたら、コカ・コーラに対抗できるほどの生産設備と販売網構築への投資、加えてブランド構築のための莫大な広告宣伝費を投じる必要があります。

従ってコカ・コーラの牙城を崩すためには莫大な資本力が必要となりますが、仮にそれを行っても旨味のある商売になる見込みが立たないため誰もコカ・コーラへは挑もうとせず、こうして高い参入障壁が築かれているのですね。

③長期潮流とは

最後に長期潮流とは、「今これが流行っている」とか「来年は○○が流行りそう」といった中短期のブームではなく、もっと大きく普遍的で、不可逆な流れの事を指しています。

著者は長期潮流の例として「世界的な人口の増加」、「健康需要の増加」、「国家財政の悪化」を挙げています。

まず、世界的には2100年頃まで人口が増え続けるのは高確率で起こると想定されており、事実といっても過言ではない長期潮流です。

そして、人々が根底に持っている願望として「健康に長生きしたい」というものがあるため、人口が増加していくならば健康に長生きしたいという人が増えてくると予想する事ができます。

また別の長期潮流として、人々は昔と比べて平均寿命が延びているため、医療費等を手厚くする傾向にある民主主義国家の国家財政は悪化していく、というものが挙げられます。

上記に挙げた長期潮流に乗っているものは何か、と考えた際に、著者は例えばカテーテル治療や内視鏡治療などの「低侵襲医療」があると挙げています。

カテーテルというのは心筋梗塞などの診断や治療に用いる細い管の事ですが、もしカテーテルが存在しなければ(極端な話)開胸手術を行う必要があります。しかし、当然の事ながら手術というのは患者の身体への負担も大きい上、手術後に長い入院生活を余儀なくされてしまいます。一方、カテーテル治療ならば患者への負担は小さく、数日で退院できます。

知ってのとおり、医療費の負担は国が多くを負担しているため、国家財政が悪化していき、かつ「健康で長生きしたい」という人が増えていく世界では、カテーテル治療などの「低侵襲治療」が発展していくという可能性が浮上してきます。

感想

著者の奥野氏は、上記3つの特徴を何一つ欠ける事なく、全て併せ持った企業こそが投資に値する企業であり、それを探し出すことが大切だと述べています。

実際問題として、そのような企業を見つけるのはかなり難しいのですが、それを実現するために NVIC がどのように投資企業を調査しているのかの紹介や、ひいてはどのようなスタンスで3つの特徴を併せ持った企業を見つけていけば良いのかについても書かれており、個人投資家にとっても参考になる要素があったと感じました。

スポンサーリンク