配当目当の投資は悪手なのか
私はインデックス投資と個別株の両方を行っていますが、個別株は配当金を目当てに投資している銘柄も多数あります。人によって賛否分かれる配当金目当ての投資について、個人的に思う事など書いてみます。
株式投資をする目的のひとつ、配当金
なぜ人は株式投資をするのか。それは当然、リターンを得るためですね。
そしてリターンを得る方法は主に2種類あり、株式自体の値動きによって得られるリターン(キャピタルゲイン)と、企業が株主に対して定期的に支払う配当金によるリターン(インカムゲイン)に大別されます。
両者の性質の違いとして、前者のキャピタルゲインは将来のある時点のタイミングで保有株の価格が取得価格より上がっているかどうか、究極的には誰にも分からないのに対して、後者の配当金は企業の業績状況に想定以上の大きな変動が出ない限りは、期待されている通りにリターンを得られる可能性が高いという違いがあります。
そういう意味では配当金目当ての投資は、債券投資に近い性質があると言えますね。
債券投資も株式投資と同様にキャピタルゲインとインカムゲインによるリターンが得られますが、債券は発行元が破綻しない限りは必ず利息が支払われ、また発行元が破綻しても(基本的には)優先的に融資額が返済されるという安全性を備えています。
一方で株式は発行元が破綻すると原則何も残らず、また価格の変動率も大きいため、債券投資よりは根源的にリスクが高い投資ですね。
したがって、配当金目当ての株式投資は概ね以下のような立ち位置になります。
[高] 株式投資(キャピタルゲイン目当て)≧ [高~中] 株式投資(インカムゲイン目当て)> [中~低] 債券投資
(注)全てにおいて上記の関係性になるわけではありませんので悪しからず。
再投資を行う場合、配当金はどうしても非効率
配当金目当ての株式投資の立ち位置について前述で整理しましたが、忘れてはならないのが配当金は税制上、どうしても不利な投資になりやすいという事です。
株式投資に関わる税率は所得税をどのように申告するかに応じて変わりますが、一般的には株式投資によるリターンはキャピタルゲインもインカムゲインもどちらも 20.315%が課税されます。(記事執筆時点)
上記は日本企業の話で、外国企業からの配当金の場合は、その国の税制に応じて更に税率が掛かる場合もあります。(米国企業からの配当金の場合は、日本の税制の 20.315% に加えて更に 10%課税される)
受け取った配当金を全て使ってしまう前提ならば、キャピタルゲインと同様にどのみち課税されるため余り気にしすぎる事は無いのですが、配当金を再投資する場合は上記の税制が複利効果を損ねる大きな枷になってしまいますね。
従って、今すぐ現金を使いたい訳でもない限りは、配当金目当ての投資はどうしても効率上は劣る投資スタイルという事は頭に入れておく必要があります。
企業内で再投資してくれるのが理論上はベスト。しかし…
税金で目減りした後の配当金を再投資するくらいなら、どうせなら株式保有している企業内で業績を伸ばせる可能性のある事に再投資してくれた方が、余計な税金が掛からないだけ株主にとっては長期的にメリットがあります。(株価は企業の業績評価の指標であり、長期スパンでは株価と業績は連動するため)
一方で、米国ならまだしも、日本のような将来的な成長性が危ぶまれている国の企業では成長につながる再投資は全体的にあまり行われていないというのが現状ですね。
日本は以前は、世界的にも多い1億人の人口からなる内需を基盤に、製造業や高品質の資本財を外国に売ることで豊かになった国でした。
しかし現在は、基盤となる人口の構成は歪なものになり、後はどれだけ衰退を遅らせられるかを検討している段階です。
そんな環境を前提とする日本企業においては、海外に積極的に打って出られる事業を持っている企業以外は、再投資をしたくても再投資先が無い、というのが実情のように感じます。
他にも、日本が強みを持っていた製造業の時代から、情報産業や半導体産業といった現在の主流産業への推移に乗り遅れ、海外企業に軒並みシェアを取られてしまった後では有望な事業投資チャンスを逃してしまった事も原因の1つには数えられそうです。
したがって、有望な投資先が無いならば、現金で株主への還元をしてくれたほうがマシ、という事になるのですね。
将来的な成長が乏しい日本企業においては、配当金で株主へ報いてくれることを期待しています。