安定した配当金が魅力的なETF、”VYM”について【米国株ETF】

今回は、安定した配当金が魅力的な米国株ETF、“VYM" について書いた記事となります。

VYMは、株式投資の魅力の1つである配当金を低コスト、手軽、かつ安定的に得たい場合に向いている ETF となります。

VYMとは

VYMとは、本ブログではお馴染みの米国の資産運用会社 Vanguard が提供している ETF (上場投資信託) となります。ETFとは一言で言えばリアルタイムで株式市場で売買ができる投資信託の事で、以前記事に書いた VT/VTI/VOO と同様、米国の株式市場がオープンしている時間帯での売買が可能です。

世の中には数多くの ETF がありますが、その中でも VYM は低い経費率で、配当利回りが平均より高い企業へまとめて分散投資できるという点が最大の特徴となります。

連動元の指数について

VYM は原則として “FTSE US High Dividend Yield Index" という指数に連動するように運用がされているため、VYM を理解するためにはこの指数の性質を理解する必要があります。

“FTSE US High Dividend Yield Index" という指数は、以下のようなルールで運用されています。

①:対象銘柄は米国上場企業のほぼ全て (“FTSE US All Cap Index" という指数に含まれる銘柄)
②:①の対象銘柄から、年間の配当利回り予測が市場平均より高い銘柄を選定(ただし不動産投資信託(REIT)は除外)
③:②で選定した銘柄を、時価総額の加重平均の手法で指数に組み込む
④:構成銘柄は毎年見直し。配当金無しになった会社は四半期毎に除外
(引用元:“Ground Rules v1.7 (PDF)" より要約)

上記ルールの②で決められている通り、この指数は常に市場平均より高い配当利回りが得られるように設計されている事が分かりますね。

また、③のルールのように時価総額の加重平均とする事で、高い配当利回りを出しつつも常に一定の市場評価を得ている(≒時価総額が大きい)銘柄を優先的に大きめに組み込む形にしており、ETF の株価そのものも値崩れしにくい…という性質を持たせようと設計されている事が推察できますね。(株価安定の代償として、極端に高い配当利回りは出なくなりますが)

過去の配当金の水準

肝心の配当金と配当利回りの水準について、過去実績は以下のグラフのようになっています。

1株あたりの年間合計配当金と、各年の年初始値株価ベースの税引前配当利回り

VYM の配当金は年4回(3月/6月/9月/12月)に分けて分配されますが、上記グラフは年間合計分を表示しています。

1株あたりの配当金は毎年増配されており、過去10年の好調だった米国経済の恩恵をしっかり反映している形になっているのが分かりますね。コロナ禍の影響を受けているはずの 2020年-2021年においてもしっかり増配している点に、指数に組み込まれている米国企業の力強さと株主還元への意地を感じます。

配当利回りは税引前の配当金と各年の年初始値ベースを用いて計算したものですが、ETFの株価自体も緩やかに上がり続けているため、毎年増配しつつも3%程度の配当利回りで安定して推移してきています。

S&P500 ETF (VOO) と比較してみる

比較用に、S&P500指数に連動するETF (VOO) と比較をしてみます。

VYMVOO (参考)
構成銘柄数410銘柄500銘柄
経費率0.06%0.03%
純資産高551億ドル8,166億ドル
年率平均トータルリターン(5年)11.54%16.74%
標準偏差(5年)14.98%15.68%
過去最大の株価暴落率(コロナショック時)-31.89%-31.24%
直近の配当利回り(税引前)2.78%1.31%
(注) 2022年2月中旬時点の公開情報ベース。情報元: Morningstar.com 他

経費率は VOO よりは高いですが、0.06% はかなり低コストな部類なので長期で持ち続けるのに何の問題も無いですね。

一番注目すべきはトータルリターン、標準偏差、過去最大の株価暴落率の3点で、過去5年間の成績においては VOO と比べてトータルリターンは見劣りするのに標準偏差(リスク)はほぼ同水準となっている事が分かります。

また、株価暴落率は2020年初めのコロナショック時のものですが、この時はあらゆる銘柄が全部売られる状況だったため、VYM も VOO と同程度のレベルで暴落しており、株式のETFである以上は歴史的な暴落の際には VYM もしっかり暴落するという事が分かりますね。

構成銘柄を比較

VYM は現時点で410銘柄に分散投資されており、特に上位の構成銘柄は以下のようになっています。

引用元:Vanguard の ETF紹介ページより

構成銘柄を比べてみると、VOO は配当よりも自社事業への投資に回して業績と株価を伸ばす、今をときめく情報技術系の銘柄が中心であるのに対し、VYM の方は安定した業績を背景に、高い配当金を出し続けている銘柄を中心に構成されている事が分かります。

このような構成銘柄の違いから、少なくとも過去5年においては情報技術産業が大きく成長した時代だったためトータルリターンの面で VOO よりも劣る結果になったという事が読み取れますね。

これからも情報技術産業の株価が伸び続けるかどうかは誰にも分かりませんが、もしそうでないと考えるなら、安定した銘柄へ低コストで分散投資して高い配当金を安定して生み出す VYM には一定の優位性がありそうです。

VYM は税制面でデメリットあり

VYM を運用する面で明確なデメリットと言えるのが、配当金を受け取る際に掛かる税制度になります。

日本人が日本の証券口座を用いて米国の株式に直接投資した場合、受け取る配当金には米国での課税分10%と日本での課税分 20.315% の両方が差し引かれる事になっています。(2022年2月 記事作成時点)

米国での課税分については確定申告外国税額控除多少取り戻す事はできるものの、それでもこの税制度によって日本人が VYM に投資して得られるリターンは思っているよりも目減りしてしまう点には留意が必要です。

この税制度によるリターンの目減りを回避したい場合には、SBI-SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンドのような VYM連動の日本の投資信託を買う手もあります。(配当金が自動的にファンドへ再投資されるため、配当金分に日本分の課税がされなくなる)

安定した配当金を継続して得たい方にオススメのETF

以上、米国の高配当ETF である VYM の概要について書いてみました。

S&P500等に連動するインデックス投資とはまた異なる設計がされており、高い配当利回りも欲しいけど株価の成長も多少は欲しい、という場合に向いていると言えそうです。

個人的には、このETF は毎月積立していくよりも、株価が大きく下落した際にまとまった資金で一括購入する際に活用したいETF だと捉えています。

理由として、基本的に株価は、将来の企業業績予測や経済動向予測の修正を頻繁に繰り返す事で時折大きく上下するものですが、企業が商売をして生み出した利益を原資とする配当金は比較的安定感をもって出される期待が高いと考えます。

株主重視文化の米国企業なら上記傾向はなおさらで、しかもこのETFなら時価総額の上下に応じて自動的に入れ替えてくれるため、今後の時代の流れによる企業の移り変わりにもついていける(と思われる)ためです。

配当利回りは高い株価の際に買うほど下がってしまうため、積立ではなく株価が下がっている際に大きめに買い付けて後は放置…という運用が個人的な理想ですね。

以上、読んで頂いた方の参考に少しでもなっていれば幸いです。

それでは、また~👋

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